『サッカーと地政学 -ゴールの先に世界が見える』の感想

『サッカーと地政学 -ゴールの先に世界が見える』の感想

サッカーと地政学 -ゴールの先に世界が見える』(著: 木崎 伸也)を読みました。手にとってパラパラと眺めたらわかる通り、内容は軽くてすぐに読み終わります。

読んでいく中でずっと気になってしまったのが、本書のタイトルの「地政学」でした。Wikipediaに書かれている「地政学」の説明は、

地政学(ちせいがく、独: Geopolitik)は、国際政治を考察するにあたって、その地理的条件を重視する学問である。

です。

私の理解でも、地政学は「地理的条件」を中心に置く分野ですが、本書では地理的な内容がほとんどなく、基本的にはFIFA・選手・代理人といった存在が国際化するフットボール市場において、どのように動いてきたか、といった内容でした。唯一、地政学っぽい側面を含んでいると感じたのは、各国のナショナルチームの話題でしたが、それもどちらかというと国の成り立ちといった歴史的問題に焦点があたっている印象でした。

昨今、台湾有事、米国のベネズエラ・イランへの侵攻といった問題が日本へどのように影響を与えるのか、という話題が連日のように新聞・テレビ・インターネットを騒がせています。特に、最近YouTube等で非常に有意義なニュースチャンネルが増えてきたこともあり、老若男女に関わらず、以前よりも深く国際政治を考える日本人が増えている印象があります。このような状況の中で、「地政学」がタイトルに入ったフットボールの本はキャッチーで、フットボール好きなら手に取ると思うので、マーケティングの方向としては良いと思います。ただ、タイトルと内容の不一致感がどうしても本書を安っぽいものにしている感じがします。

個人的にサッカー記者としての木崎氏は大好きで、その行動力から生まれる取材力や独特の視点は素晴らしいです。一方で、YouTubeなどで話している内容を聞いていると、自身の持っている情報から導き出す結論とそこに至る論理過程に疑問符が付くことも多々あります。本書からはそのような木崎氏のキャラクターが少し滲み出ている気がします。

と、ここまで少し批判的になってしまいましたが、内容がつまらない、というわけではありません。よく知らなかったFIFAの汚職事件や各国ナショナルチームの抱える問題など、ヨーロッパフットボールを観ている人は楽しめる話題がたくさんあります。タイトルが「サッカーは世界でどう動いているのか」みたいな感じだったら、内容との不一致感もなく、より楽しめたのではないかなと思います。